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大学無償化、無利子奨学金について

 新聞やテレビ等で報道されているのでほとんどの方がご存知かと思いますが、現在国会では高校や大学の無償化について議論されています。賛成、反対など様々な意見があるかと思います。私個人としては、こういった制度があること自体については、基本的に賛成です。しかし、現在議論されているやり方では弊害が生まれる、予算の浪費が生まれると懸念しています。

 

 現在の議論でも、全員を無償化と言うことではなく、まずは所得制限を設ける方向で進んでいます。これはこれで一定の基準は必要ではあると思います。税制には富の再分配という一面もあるので、その原則に沿った考え方です。ただ、難しいのは区切りをどこにするかということになります。

 

 一方でもう一つの基準として、重要なものとして学力や成績があります。そもそもこの制度の発端の考え方の一つは、学びたいという子供たちが経済的理由であきらめてしまう、選択肢が限定されている状況を改善したいということです。従って、このような基準が設けられるのは当然です。学ぶ意欲を何で計るかは非常に難しく、現実的には個別に面談することも困難です。そうなると、やはり成績での区切りということになるでしょう。

 

 ただし、現状では所得制限だけになる可能性が高いように思われます。おそらく、学力については受験でのフィルターが流用されるでしょうから、そうなると、一定の所得条件を満たして、合格すれば誰でもその恩恵に与れることになります。受験の苦しさの反動もあって、少なくない学生が大学では遊び呆けています。そんな学生まで面倒を見る必要はありません。

 

 そこで、この制度をより良いものとして、本来の目的を達成するためには、入学後の成績によるふるい落としが必要だと考えます。一般に大学の成績は秀・優・良・可・不可で行われますので、例えば、良が何割以上、不可が何個以下でかつ、年次振り分け単位の何割以上を修得するなどの条件が必要です。その上で、条件を満たさなくなれば無償対象から外す、または、有利子で貸し出す方式に切り替えるなどの措置を取る方式にします。上位成績という条件ではなく、普通に大学に行って学んでいればクリアできる条件で良いでしょう。学びたいと言って他人に学費を負担してもらっているのですから、これぐらいの条件はクリアできて当たり前でしょう。学ぶ気持ちの無い学生まで拾い上げる必要はありません。

 

 また、無償化ともう一つ進んでいるものに、無利子奨学金があります。この制度自体は、無償化と同じ考え方で基本は賛成なのですが、現在予定されている制度設計では問題があります。奨学ですから卒業後に返還するのですが、一定の所得が無ければ減免、免除等がされる方向で議論されています。これでも性善説に則れば良いのですが、社会の現実を見ると働きたいけど働けなくて所得が少ない人もいれば、働きたくないからフリーターでフラフラしている人もいます。前者はこの制度で助けることに意味がありますが、後者が助ける意味はありません。しかし、現状の制度設計では、本当は意図的に働いていなくても返還が免れることになります。

 

 現状の制度設計では、やる気のない人達を大学4年間遊ばせるだけになってしまいます。そんなことをしていると、制度としての意味が無くなり、最終的には本当に助けなければいけない人たちにしわ寄せがいくことになります。現在の社会の問題は様々なものがありますが、良くも悪くも安定した社会基盤があるので、努力しなくても生きていけてしまうことがこのような矛盾を生んでいると思います。こういった制度は、努力しているけど、努力したいけど環境が整っていない人を助けるものでなければなりません。

 大原則は、努力が正当に報われるということが大切だと思います。