日本人なら誰でも小学校で日本国憲法について教育を受け、その中で日本国民の「3大義務」について学んだはずです。すなわち、教育、勤労、納税です。ほとんどの人は生活するために働くと考えておられるかもしれず、確かにそういった面はあります。しかし、国という形を考えた時には国民の勤労は通常必須条件であると言えます。そこで、今回はこの日本国民の3大義務の一つである勤労について、3つに分けて労働というものを考えてみたいと思います。
まず、念のため3大義務について簡単に復習しておきます。
一つ目の教育の義務は、
- 憲法26条
- 1項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
- 2項 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
とし規定されています。すなわち、誰しもが最低限の教育を受けることができるというものです。
納税の義務は、
として、規定されています。すなわち、国体を成す、相互扶助といった点において必要な負担を負うということです。
そして、今回のテーマである労働、すなわち、勤労については、
- 憲法27条
- 1項 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
と規定されています。非常に興味深いのは、勤労の義務と共に勤労の権利も有しているということです。
さて、このように規定されている勤労、すなわち、労働ですが、当然のことながらただ働けばよいというわけではありません。労働には給与等の対価が支払われると同時に、アウトプット等の求められるものがあります。
ここからが本題です。この求められるものとは何でしょうか。製品であったり、新技術であったり様々な考え方がありますが、ここではそれらを集約して3つにまとめて考えたいと思います。すなわち、「質を求められる労働」、「量を求められる労働」、「質と量を求められる労働」の3つです。
一つ目の質を求められる労働とは、研究開発などの新商品、新技術を生み出す労働が代表としてあげられます。また、製造においても、ブランド品などは量よりも質を重視した労働が求められるものとして挙げられるでしょう。少し系統の違った例では、接客などのサービス型労働もこのタイプに分類されます。これらを一言で表現するなら、創造的な労働、一般的には知的労働などと呼ばれる種類のものと言えます。したがって、指示されるままに労働する、決められた通りにやればよいというわけにはいきません。自立的に考え、工夫し、行動することが求められます。すなわち、能動的労働が求められるアウトプットを生むということです。
二つ目の量を求められる労働とは、生産現場などで実際に商品を生み出す労働や運送などが挙げられます。共通する点は、労働量とアウトプットが強い相関を持っているということです。これに対して前述の質を求める労働は、この相関が極めて弱いものであると言えます。また、量を求めるタイプの労働の場合には、決められたこと、指示されたことを確実に実行することで効率を追求することが多いと言えます。その点では、自立性、能動性は質を求められる労働に比べて低いと言わざるを得ません。しかし、だからと言って、自立的に考えること、能動的に行動することが全て否定されるわけではありません。例えば、前述の効率を高めるという観点においては、そういった自立性、能動的思考は必要不可欠です。
3つ目の質と量を求められる労働は、最も難易度が高い労働ということができます。しかし、実は日本の産業は高度成長期においてこれを実現していました。すなわち、高度成長期のような大量生産、大量消費型社会の状況においてさえ、量と同時に質を追求し続けました。その結果生まれたのが、「ジャパン クオリティー」、「made in japan」です。しかし、現代においては技術の進歩もあって、一定のレベルにおいては量と質の両立が容易に実現できるようになっています。また、マーケットの求めるレベルも高まっており、この両立を要求しています。
このように、労働とは複雑であり一言でくくれるものではありません。そして、質と量の両方を求められる労働で述べたように、社会の変化によって状況も変わります。重要なことは、何が優先されるのか、何が求められているのかを認識することです。