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交渉のコツ・ポイント(バイアス:先入観、思い込み)

 ビジネスの世界では、商取引をはじめとして様々な交渉の場面があります。交渉においては様々な要因が影響します。最も影響を持っているのは、ステークホルダー(利害関係者)や決裁者と呼ばれる人たちであることは言うまでもありません。しかし、それ以外にも重要なものとして「バイアス」(先入観、思い込み)があります。

 そこで今回は、そんな様々な交渉の場面におけるポイント・コツの一つである「バイアス」について書いてみたいと思います。

  交渉を行う場合には、通常事前に情報収集をして方針やスタンスなどを予め検討しておき、時には自分たちが有利になるであろうと考える交渉の材料を用意します。また、交渉の場においても、その場で相手から得られる情報は交渉の流れや結果に対して大きな影響を与えることは言うまでもありません。すなわち、交渉とはそういった情報という土俵の上で展開されるということができます。言い方を変えると、交渉は情報によって左右されるということになります。

 

 従って、交渉に対して影響を与える情報が間違っていたり、間違った理解をしてしまうと交渉の流れが間違った方向に流れることになります。そんな中で、最も端的なものがバイアス、すなわち、先入観や思い込みです。

 

 交渉におけるバイアスでまず挙げられるのが、いわゆる「アンカーリング」と呼ばれるバイアスです。例えば、交渉当事者のどちらかが最初に何らかの提案をした場合、それがその交渉における暗黙の基準となるケースです。最も分かりやすいのは価格におけるアンカーリングです。よほど明確な基準や意思を事前に持っていない限りは、最初に出された金額を基準として値引き交渉等が行われてしまうような状態です。要するに、最初は「ふっかける」という戦略がとられます。

 

 また、アンカーリングにおいては相手からの提案によるアンカーリングだけでなく、自分自身に提案による自己アンカーリングもあります。これは、第1方針が最善であるという思い込みです。交渉の中で新たな情報が出てきたり、状況が変わったりして最適方針が変化しているにもかかわらず、最初の提案、方針に固執するような状況です。例えば、最初に想定したパイの大きさが決定的であるという誤解もこのバイアスの一種です。第3の選択肢の登場などによって新たなパイが現れているにもかかわらず、最初のパイの取り合いに終始するような状態です。

 

 二つ目は、利益相反が絶対であるという誤認のバイアスです。これは、自分の利益を確保するためには、必ず相手の利益を削らなければならない、相手の損失がぜったいであるという誤解です。確かに利益相反というケースもありますが、必ずしもそうではありません。多くの場合、双方が利益を確保できる選択肢が存在しているものです。例えば、前述の第3の選択肢のようなものの存在です。

 

 三つ目は、情報の誤認によるバイアスです。これは、自分の知っている情報が全てであり、それらが全て正しいという思い込みです。本当は不十分、不適当な情報、間違った情報であるにもかかわらず、それらに基づいた判断に固執してしまう状態です。前提条件が崩れてしまっているのですから、ほとんどのケースでその判断は最適なものではありません。

 

 また、情報の誤認のバイアスを生じる原因として、客観的な判断ができていないケースが挙げられます。例えば、その情報自体を客観的、論理的に解釈して適性を判断するのではなく、その情報を得たプロセスに判断を委ねてしまうような状態です。すなわち、苦労して得た情報を重用するなどです。

 

 四つ目は、自己都合によるバイアスです。これは、例えば自分に都合の良い情報だけを見る、自分に都合の良いように解釈するといった状態です。このような状態になると、当然のことながら誤った情報の解釈を招き、最終的には判断を誤ることになります。

 

 五つ目は、狭視野のバイアスです。これは、自分の側からの主観的視点だけに立って判断をする状態です。このような状態になると、相手の視点や客観的視点を無視して、自分の主観的考え方だけに頼って判断してしまいます。これでは、正しい判断ができないことはもちろん、自分の主張だけを押し通すことを考えて交渉という状況ではなくなってしまいます。また、優れた第3の選択肢を見落とすというようなことも起こります。

 

 交渉では、これらが以外にも様々なバイアスが発生します。最善の結果を得るためには、それらに惑わされないことが重要です。

 

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