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自衛隊に学ぶ管理術(組織を統率する方法)

 企業という組織を統率していくことは容易なことではありません。置かれて環境は生き物のように刻一刻と変化しており、組織を構成する要素も多種多様です。したがって、たった一つの万能とも言える組織を統率する方法、マニュアルというものはその宿命上存在しないと言えます。しかし、だからといって成すがままに任せていては組織は崩壊してしまうことは明らかです。このような状況を踏まえて考えると、自衛隊という組織は実に統率のとれたものであると言えます。もちろん、軍隊という性格、厳しいルール、規律によるところは否定できませんが、それだけで実現できるものでもありません。

 そこで、今回は組織統率について、自衛隊に学ぶという観点で観点で書いてみたいと思います。

  自衛隊の組織統率力が高い背景には、前述のように軍隊であることは否定できません。その活動は生と死が紙一重に混在しているわけですから、個々にバラバラの考え方や行動をしていてはあっという間に全滅してしまいます。そのために、厳しいルールや規律があるわけですが、単にルールを消えていけばよいわけではありません。多すぎるルール、厳しすぎるルールは守ることができません。この矛盾するとも思える部分にこそ自衛隊の管理術のポイントがあると言えるでしょう。

 

 明文化されたものではありませんが、不文律とも言える暗黙の共通認識として、自衛隊の組織管理術にはいくつかのポイントがあります。

 

 一つ目のポイントは、「ルールは単純明快か」ということです。複雑なルールには解釈の多様性が生まれてしまいます。また、解釈自体も複雑化していくために決断が遅れます。決断の遅れはそのまま(軍隊にとっては)生死にかかわる問題です。一般の組織においても同様で、刻一刻と変化する環境に対応していくためには、即座に、出来れば、自動的に一つの決断に達することができるルールの単純明快さが要求されます。

 

 二つ目のポイントは、「スピードは力である」ということです。一つ目のポイントで書いた通り、素早く判断することは状況に対応するために必須です。例えば、時間かければ状況が改善するのであればそのようにする意味がありますが、悩んでも答えの出ないようなこと(未来の予測など)に時間をかけても無意味であると言えます。決して軽率な判断を助長するものではないことはもちろんですが、時間をかける意味があるかどうか常に考え、判断することは極めて重要です。

 

 三つ目のポイントは、「全員が知っているか」ということです。いくら素晴らしい規律やルールであったとしても、周知されていなければ組織と統一性を維持することができず、破たんへと進んでしまいます。ルールや規律は全員が知っているということが大前提になるものです。そのために、周知の努力をすることを怠けていけません。

 

 四つ目のポイントは、「継続は強さである」ということです。モチベーションやテンションはスタート時には高まっていますが、徐々に弱まっていきます。そして、ルールや規律に対する考え方も、徐々に低下して、薄まっていきます。これでは、せっかく良いルールや規律が存在していても組織の統率は徐々に弱まっていくことになります。したがって、初心忘るべからずの精神で継続することが重要となります。

 

 五つ目のポイントは、「基本の徹底と繰り返し」です。組織は成長しなければならず、したがって、その中身はどんどん複雑化していきます。そんな時にこそ、基本を繰り返すことは、基盤力を高め、土台を固めることにつながります。組織を構成する全員が自然に同じルール、規律に基づいて判断し、動けるようになることが組織統率力を高めることであるとも言えます。そのためには、基本の徹底と繰り返しが最も確実な方法です。だからこそ、自衛隊でも基本訓練を愚直なまでに繰り返しているのです。

 

 六つ目のポイントは、「ルールは追加せず、差し替えと改訂を基本とする」です。組織が複雑化していくと、どうしてもルールが増えていく傾向にあります。しかし、冒頭でも述べた通り多すぎるルール、複雑すぎるルールは守ることが困難です。したがって、新たなルールを追加しなければならないような新規の状況が生まれない限りは、既存のルールや規律は追加するのではなく、差し替えや改訂によって対応していくことが適当であると言えるのです。

 

 ルールや規律は気が付くと無尽蔵に増加して、複雑化していくのが世の常とも言えます。その結果、気が付けば、実態に合わない過去のルールに縛られているということが起きてしまいます。これら六つのポイントを参考に組織の統率について考えた頂ければと思います。

 

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