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意思決定の方法:行動意思決定論(確実性選択のバイアス)

 様々な意識決定の場面がありますが、その中で2者択一を迫られることが数多くあります。通常はどちらが得か、どちらがより望ましい結果が得られるか、または、その可能性が高いかということを考えて判断します。しかし、その時に純粋に前述のような判断基準を客観的に適用できているかというと必ずしもそうではありません。

 そこで、今回はそんな時に作用する心理的バイアスである「確実性選択のバイアス」について書いてみたいと思います。

  こんな実験があります。サイコロを振って6が出たら5ドルプレゼントし、偶数が出たら1ドルプレゼントという選択肢を被験者に与えた時にどちらを選択するかというものです。確率は、当然がらそれぞれ1/6と1/2です。皆さんならどちらを選ぶでしょうか。確率の考え方で判断するならば期待値を用います。ある事象が起こる確率とそれが起こった時に結果から考えるリターンの値です。この場合、6が出た時に5ドルプレゼントの期待値は約0.8ドル、偶数が出た時に1ドルプレゼントの期待値は0.5ドルですから、サイコロを振って6が出たら5ドルプレゼントを選択するのが確率論的には正解ということになります。

 

 しかし、実際の実験結果では半分以上の人が偶数が出たら1ドルプレゼントを選択しました。これこそが、確実性のバイアスです。仮にリターンは減ったとしても確実に起こるとより期待できる方を選ぶ心理的バイアスの一つです。

 

 また、別の実験で対象集団を金銭的に余裕のあるグループと、その日の食にも困るグループの二つにした場合、興味深い結果となります。前者の金銭的に余裕のあるグループは、よりゲーム性の高い6が出れば5ドルプレゼントを選ぶ割合が高くなります。これに対して、後者のグループでは逆に偶数が出れば1ドルプレゼントを選ぶ割合が高くなります。すなわち、前者のグループでは確実性という点について魅力が無いということが分かります。一方で後者のグループは余裕としての後のことよりも今をどうするかというバイアスがかかっていることになります。

 

 このように、フラットな状態、すなわち、追い込まれているなど特段の状況でない限りは、人は通常確実性バイアスの影響を受けます。しかし、一方で確実性のバイアスに限らず、心理的バイアスはその時の状況によっても大きな影響を受けることになります。

 

 当然、このような心理的バイアスは、日常の意思決定はもちろん、仕事の上でも起こります。特に、追い詰められているとき、余裕がない時には、前述のようにより強く確実性のバイアスが働くことになります。ここで問題は、状況によって選択が影響を受けているということです。すなわち、その時の心理状態によって人は最善の選択をできない可能性があるということです。そして、問題なのは自分自身としては状況に合わせて最善の選択をしていると感じてしまうことです。

 

 特にビジネスの場における意思決定では、フラットであると、きゃかん的であることが極めて重要となります。にもかかわらず、そこに人が介在することでその原則が揺らぐ可能性があること、そして、それに気付かないということがあるのです。したがって、このような心理的バイアスがあることを知っておくだけでも、重要意思決定をするときの役に立つのではないでしょうか。

 

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