XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)はESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも呼ばれ、日本語ではX線光電子分光と呼ばれています。表面分析の代表的手法の一つで、表面から数nm程度までの極表面領域の組成や元素の化学状態が解析できます。
今回はそんなXPSについて書いてみたいと思います。
冒頭のように二つの名前で呼ばれているのは、当初物理分野に近い人達はその原理からXPSと呼び、有機物への応用を中心にした化学分野の人たちはその使用状況からESCAと呼ぶようになったと言われています。日本では語呂の良さからESCAを使う人が比較的多いかもしれません(ESCAを「エスカ」と読む)。どちらも一応間違いではありませんが、やはり原理的なことを考え、他の分析手法(AESやFTIRなど)との統一性を考えると、私個人としてはXPSを推奨しています。
ちなみに、余談ですが、名古屋の地下街の名前は「エスカ」で表記もESCAです。由来は、E:駅西、S:ショッピング、C:センター、A:アベニューらしいです。
こんな歴史を持つXPSですが、いったいどんなことができ、どんな用途で使われているのでしょうか。
できることは、表面から数nmを検出できるという特徴を活かして、様々な材料の表面分析に用いられます。表面分析の具体的内容としては、元素組成の評価や化学状態の解析が主たるものになります。ここで言う化学状態とは、例えば金属元素であればその元素が金属状態なのか、酸化物なのか判別、炭素であれば「ーCOO-」という状態にあるのか、「-CO-」という状態にあるのかの判別などです。そして、同時にそれらの組成、比率も解析することができます。
では実際にどのような用途で使われることが多いかというと、一つは何らかの表面処理(酸化処理や洗浄処理、被膜形成など)を行った試料について、想定通りの表面状態になっているか、被膜が形成されているか等の判断に多く使われています。これは、まさにXPSの特徴である表面の組成や化学状態が分かるということを利用しています。
二つ目は、接着不良などでの汚染分析です。接着等では極薄の汚染であっても大きな影響を与えるので、表面に何らかの異種成分が付着していないかという確認は不良解析の第一歩になります。ここでも、極表面の解析ができるという特徴を活かして、汚染成分の有無や状態等を解析します。
このように、XPSは極表面における組成の変化や化学状態の変化が伴うような試料の評価に用いられています。
XPSの原理や測定、解析のコツなど、より詳しい情報はジャパン・リサーチ・ラボホームページのXPSのページをご覧ください。また、分析に関するご相談や指導のご相談などはこちらへ。