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コロナ下で感じる「三方よし」の意味

 近江商人という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。実は現在も活躍する多くの企業が近江商人に起源を持っています。西武グループ伊藤忠グループなど上げればきりがないくらいです。そんな近江商人の残した言葉に「三方よし」があります。今回はこの言葉をコロナ下での経済活動という視点で考えてみたいと思います。

  「三方よし」は、

  売り手よし

  買い手よし

  世間よし

を意味します。商売をする上では、当然「売り手よし」として利益を上げられなければなりません。しかしそれだけでは駄目で、お客様にも満足いただかなければならない、すなわち、「買い手よし」です。

 

 ここまでは、商売の素人でもすぐに思いつくことです。利益ばかり追求して、粗悪品を売ったり、暴利を得たりすればお客様の信用を無くし、商売が成立しないからです。買って良かったなと思っていただければこそ、また買おうという気持ちが生まれ、商売が継続するわけです。

 

 しかし、それだけではビジネスを長続きせず、成長もできません。それを言っているのが「世間よし」です。どんなビジネスであっても、社会基盤があってこそ、安定した社会活動があってこそ成立します。犯罪がはびこる社会で全うなビジネスを続け、成長させることは困難です。また、貨幣も社会の信用の上に成り立っています。

 そのような意味で、ビジネスとは社会ありきで成立するものであり、同時に、安全や信用といった社会リソースの上で成立するものだということです。従って、売り手と買い手だけで考えるのではなく、その両者の基盤となる社会とのかかわり、社会基盤の維持と成長に寄与しなければならないということです。それが「世間よし」です。

 

 現在新型コロナの感染拡大で経済活動が制限されています。その中では、助成金等も出ていますが、金額的には十分ではないという意見も多くあります。そのため、緊急事態宣言が出ても要請には応じられないというケースが出ています。また、その前のGoTo政策も感染拡大の危険性を軽視して売り手と買い手の利益を優先したものでした。その結果、第3波としてより深刻な状況を生んでいます。

 これらは、「売り手よし」、「買い手よし」だけを優先して、「世間よし」を軽視した結果です。確かに、市場の経済活動が停滞したり、廃業が出てくれば税収も減り、社会基盤への影響も出てくるでしょう。しかし、最悪の状況(新型コロナの感染爆発によるロックダウン、その長期化)は社会基盤に対してより大きなダメージを与え、回復を困難なものにします。

 

 今認識すべきは、自分たちのビジネスは社会という器ありきで成立しているということ、そして、少なくともビジネスという観点ではまず優先すべきはその器であるということです。これは、ビジネスだけでなく、娯楽も含めた社会生活でも同じことです。

 一か月の本気の我慢で乗り切るのか、それとも、それを拒んでより長期に深刻な状態に陥るのか、ということです。普通に考えれば答えは一つです。その我慢の期間、みんなで助け合えばいいんです。

 

 そして、重要なことは国のかじ取りです。政治の判断が重要なことは言うまでもありません。この状況かで何千億の費用を使ってオリンピックをすることにどれほどの優先度があるのか。その予算を対策に回すこともできるはずです。オリンピックをコロナに勝った象徴になどという言葉も聞こえますが、その言うことは勝ってからいうことです。

 

 ビジネスだけでなく、全てにおいて「世間よし」ということを考え行動すれば、結局各個人の便益として返ってきます。