JRLテックログ

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電子帳簿保存法改正に関して

 2022年1月1日から電子帳簿保存法が改正されていることは皆さんご存知だと思います。ここでは詳しい内容は記載しませんが、

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf

を始めとして、国税庁HP

www.nta.go.jpはもちろん、様々な解説ページがあります。

 

 今回の改正の中で特にややこしいのがタイムスタンプです。真実性を担保する方法として指定されています。実際には規定を整備することで回避することもできますが、今後どうなるかは不透明です。

 

 このタイムスタンプが曲者です。基本的には認証または要件を満たすアプリやクラウドを使って保存することでタイムスタンプを付与する方法を取ることになります。そのため、有料から無料まで様々なサービスが保存サービスをスタートしてPRしています。

 

 ここで一つの大きな問題が生じます。特に無料サービスの場合、非常に魅力的ですが、永続性という大きな懸念があります。私は会計にクラウドシステムは利用していません。理由は、何らかの事情(ほかにもっと良いものが見つかった、値上げなど)でサービスを変更したい時やサービスが終了した場合にどうすかというのが理由です。何らかの形でダウンロードはできるようになっているものがほとんどですが、移行がスムーズにいくかどうかは大きな不安です。旧サービス、新サービスともに別会社ですから相手のことは知りませんで終わることになるでしょうから、ユーザーが何とかしないといけません。

 

 そして、重要なことはそれらのデータは全て法定保存書類だということです。保存期間内に正常な形でアクセスできなくなると法令違反を問われることになります。

 

 で、タイムスタンプです。無料サービスが終了する、有料化する、または、有料サービスが値上げする。すべていつでも起きうることです。そして、ネットの世界では無料サービスの停止や有料化日常茶飯事です。そうしたときに、タイムスタンプが必要な証憑はどうなるのでしょうか。

 ダウンロードはできます、しかし、タイムスタンプは消えます。有料化が嫌で退会すればデータは全て削除されます。しかし、タイムスタンプ付与の期限もあるので改めて古い証憑を処理することはできません。

 

 いくつかの無料サービスに問い合わせました。

F社回答

「退会や無料プランのサービスが終了した場合、登録していたデータは閲覧・入手できなくななる。この場合は、サービスの中止および終了を定めた規約に基づき、当社は一切の責任を負いかねる。」

M社回答

「サービス終了や退会が行われた場合は、データは全て削除されます。一方で、現在サービス終了の予定がないため、サービス終了時におけるデータの扱いにつきまして決定していることはない。

ダウンロードされたデータにつきましては、タイムスタンプの付与は行われない。

以下の内容をもとに専門機関へご相談ください。

・電子取引区分に対応できるクラウドサービスを使って保存していたファイルがあり、それをダウンロードしたこと。
・今後以前利用していたクラウドサービスは使わないこと。
・どのようにしたらダウンロードしたファイルを電帳法対応とできるか。また、ダウンロードしたファイルにはタイムスタンプが付与されていないこと。」

(回答は社名の削除や一部社名が類推できる部分は修正していますが、内容自体は改変していません)

という結果になりました。回答の丁寧さに違いはあるものの、いずれもユーザーでの対応が必要になります。

 

 タイムスタンプ付与ということ自体がどこまで意味があり、必要なことなのか私には理解できていません。そもそも紙ベース(内容に日付が記載されているだけ)のものが認められているのですから、なぜ電子データだけタイムスタンプが必要なのか。結局は納税者に負担を強いるだけの制度になっています。国税庁がタイムスタンプを付与してくれるとか、特別なサービスを利用しなくても処理できるようにする必要があります。納税という義務に対して、特定のシステムが利用できなければできないような制度は間違いです。誰でも、特別な負担なく処理できることが必須ではないでしょうか。

 

 かなりの方(特に個人事業主)は無料サービスの利用を考えておられると思いますが、サービスの永続性という観点での検討も忘れないで頂きたいところです。