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薄利多売モデルの崩壊(社会構造の変化によるマーケットへの影響)

 ビジネスモデルのは様々なものがありますが、近年の中心になってきたものの一つに「薄利多売型モデル」が挙げられます。改めての説明の必要もないでしょうが、品物一つ当たりの利益を少なくし、たくさん売ることで、全体の利益を多くするような商売のやり方を薄利多売型と呼んでいます。しかし、最近ではこのモデルが崩壊して、高付加価値商品へと市場はシフトしようとしています。

 そこで、今回はこのビジネスモデルの変化について書いてみたいと思います。

  薄利多売モデルが成立するためには、文字通りたくさん売れること、作れば売れるというような環境が必要となってきます。まさにこの薄利多売モデルが要求する環境にマッチしたのが、日本においては高度経済成長期でした。まさに経済成長まっただ中で、人々は新しいものを欲し、生活水準の向上を望んでいました。人口もまだまだ増加傾向であり、購買層に対する心配もありませんでした。

 このような環境では、モノは作ればどんどん売れますから、薄利多売モデルも容易に成立すると言えます。

 

 ここで、実は高度経済成長期に薄利多売モデルがマッチした背景がもう一つ上げられます。それは、収入の変化です。確かに高度成長期であり、人々の収入は増加傾向にありました。しかし、まだまだ増加途中であり、また、過去の苦労の記憶も鮮明に残っています。このような状況の中では、いくら良いものでも高価なものを購入できるのはごくわずかの人達で、大部分はまだまだ安いものを求めていました。これこそが薄利多売にマッチしていたと言えるでしょう。

 

 一方で、現代に目を向けると状況は大きく変わっています。経済の成長は鈍化、停滞しており、見方によっては後退しているとも言えます。生活水準も平均モデルが十分に高くなっており、多くの人達が平均か、それ以上と感じられる生活を送っています。そうです、モノが溢れている、欲求が満たされている環境に大部分の人達が置かれています。また、肝心の購買層を形成する人口も頭打ちで、少なくとも日本においては減少フェーズに入ろうとさえしています。

 このような環境では、モノは以前のようには簡単に売れません。すなわち、薄利多売モデルが崩壊している状況であると言えます。

 

 また、人々の欲求も変化しています。高度成長期はゼロやマイナスの状態から平均への生活水準の移行を望むフェーズであったことから、皆と同じモノ、同じ状態になることがまずスタートとなります。すなわち、基本的には全員が無い状態からある状態に変わろうとするわけですから、量が売れるだけでなく、同じモノ、同じ状態であることに満足を感じることができました。

 

 しかし、現代では皆が平均は当たり前で、それよりも上であることを望んでいると言えます。従って、周囲と同じであってはこの欲求を満足することはできません。言い換えるなら差別化のフェーズであると言えます。少しでも人と違うモノ、自分だけという個性を主張できるモノが望まれています。

 

 このような環境の中では、到底薄利多売モデルは成立しません。なぜなら、薄利多売モデルにおいては、基本的に同じものを効率的に製造してコストを低減することで利益を捻出しています。しかし、現代のような環境でこのやり方は適しません。従って、薄利多売モデルが崩壊したのです。逆に人々は、欲求を満足するモノであれば、それが降下であっても、無理をしてでも手に入れる購買行動に変わってきています。

 従って、現代のおいてはコスト低減ももちろん重要ではありますが、それよりも差別化への対応がより重要になっているということになります。言い換えるなら、量の市場から質の市場へと移行しているということになります。

 

 ビジネスの世界では、この例のように抗いようのない環境の変化、一種のパラダイムシフトに見舞われることがしばしばあります。その多くは予想の難しいものではありますが、一方で全く予想ができないわけではない一面も持っています。例えば、購買欲求の変化は、このままモノが市場に増え続ければどこかで飽和していくことは容易に想像することができます。また、人口についても確かに戦前戦後共にそれ以前に比べて爆発的に人口が増えていますが、高度成長期には世帯当たりの子供の数はそれ以前に比べて確実に減っています。従って、どこかで飽和または減少に転ずることは想像に難くありません。このように、既に始まっている未来を見い出すことが市場で生き残るための条件であることは間違いありません。言い換えると、戦略がより重要になっているということです。

 

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