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コンフリクト(衝突)解決の戦略、考え方

 交渉においては、双方の主張が最初から一致しており、決着の得るまでに何の苦労もないというようなことは通常はあり得ません。普通は、何らかの主張の相違が存在し、それらを解決すること自体が交渉であるとも言えます。交渉における戦略、考え方はこれまでも様々な検討がされており、このブログでも、例えば、ZOPA、BATNA、競争的アプローチ、協調的アプローチなどいくつも取り上げています。

 そんな中で、今回はコンフリクト(衝突)解決戦略とでも言うべき5つのパターンについて書いてみたいと思います。

 

 5つのコンフリクト解決戦略の一つ目は、最も目指すべき戦略である「協調」です。これは、別稿でも書いている協調的アプローチを取るという戦略です。すなわち、互いの利益を最大化することを共通のゴールとして、互いの主張を調整するものであり、ZOPA(可能妥結範囲)BATNA(最適代替案)といった考え方を取り入れていきます。ただし、このとき後述する「強制」や「妥協」といったアプローチは持ち込まないことが大きなポイントになります。あくまでも、win-winの決着を目指して、両者の利益を最大化することを目指します。

 

 二つ目のコンフリクト解決戦略は、「強制」です。文字通り、一方が自身の主張を無理やり強制的に押し通して、相手の主張をつぶしてしまうやり方です。当然ことながら、このような状況になってしまうと一方はハッピーですが、他方は不満を感じることになります。したがって、短期的には交渉は自身の主張を通した形で決着して一瞬は利益が最大化しますが、長期的見れば他方は不満を膨らませていくことから関係が悪化することが考えられます。したがって、長期的に見れば利益を損なうことが容易に想像できます。このような観点からすれば、強制というような戦略は取るべきではないことは誰にでも容易に理解できます。しかし、実際の場では想像以上に強制状態になっていることが多くみられます。これは、強制的状況になるのは、両者の力関係が極めてアンバランスな場合に起こることに起因しています。例えば、最も分かりやすいのは店員と客の関係のような取引関係における売り手と買い手です。このように多くのビジネスの場面や日常では力関係の不均衡が存在ます。したがって、強制戦略の問題点(長期的利益の減少)を十分に認識して交渉を進める必要があります。

 

 三つ目のコンフリクト解決戦略は、強制の逆となる「服従」です。こちらは、供されてということではなく、自身の意思として相手の主張を飲んで、服従する形を取る戦略になります。一見すると、なぜそのような戦略を取る必要があるのかという疑問を感じる方もいるかと思います。この戦略は、全体最適、長期視点に基づくものであると考えればその疑問の答えが見えてきます。すなわち、短期的には利益を逸失したとしても、その代わりに長期的視点、全体視点においてはより大きな利益を優先するという考え方です。端的な例を挙げれば、「貸しを作る」、「バーター取引」などがこの考え方になります。ほとんどのビジネスは一回限りということはなく、複数回、長期的ビジネスを目指します。その観点においてはこの服従という戦略も一つの選択肢となります。

 

 四つ目のコンフリクト解決戦略は、「妥協」です。交渉を重ねていると、どうしても精神的にも肉体的にも疲れが出てきます。また、このまま交渉を進めても進展の兆しが見えないと感じられることもあります。そんな時、人間はついつい楽な方を選んでしまいがちです。その一つが妥協です。もちろん、そういった状況だけでなく、早く交渉を終わらせたい、決裂を避けたいという思いも判断を妥協へと誘導します。しかし、妥協は確かに決着を早める効果はありますが、その結末は通常は満足を得られるものではありません。どちらかと言えば、後悔を感じることがほとんどです。交渉の目指すべきゴールが双方の利益の最大化とすれば、これは双方にとっての利益の最小化ともいうべき戦略です。妥協とは、利益を削って決着を取る事にほかなりません。

 

 最後の五つ目のコンフリクト解決戦略は、「回避」です。これは、決着を避ける、または、交渉そのものを避けるという戦略であり、要するにすべてを先延ばしするということです。したがって、課題は何も解決されず、何も得ることはできません。そして、全てが残っているので、いずれ同じ交渉が必要な状況に陥ります。したがって、基本的には選択すべきではない戦略と言えます。ただし、物事、特に交渉にはタイミングというものもあります。環境や状況が変われば交渉の状況も変わるので、時間を置くことで進捗が期待できる時には一つの戦略と考えることもできます。

 

 交渉とは生き物であり、必ずしもここに上げたように明確に状況を区別することが困難なことも少なくありません。ただ、基本的戦略を理解しておくことで、対応の幅も広がります。

 

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