JRLテックログ

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日本で新型コロナの感染数、重症化率、死亡率が低い理由(仮説)

 本記事は、様々な情報を元にした仮説であり、疫学的を含めて検証等を行ったものではありません。

 

仮説1: 検査数が少ないために見つかっていないだけである。

 確かにこの可能性はあると考えられます。東京オリンピックの延期が決まってから東京での検査数と感染数が増えたようにも見えます。しかし、一方でこの仮説が正しく実際の感染数が発表数よりもはるかに多いとすれば、重症患者、死者数も多いと考えるのが妥当です。ここでも、見落とされているだけ、さらには、隠蔽されていると言えばそこまでですが、それでも有意な差異は認められると考えられます。ここに加わる仮説として、日本人は重症化しにくいということがありますが、これは後述します。

 

仮説2:日本人は重症化しにくい

 これには様々な原因が推定されています。

・日本人の行動が感染を抑制して、母数が少ないので重症者も少ない

 マスクや手洗いなどの習慣が定着していることが功を奏しているという考え方です。日本では当たり前の食事前の手洗いに習慣は、欧米ではあまりないと言われています。また、コミュニケーションの形も違います。これらの違いが感染拡大を抑制して言うという考え方です。一定の効果は考えられますが、これだけを理由に諸外国との重症化率や死亡率の低さを説明することは難しいでしょう。ただ、感染拡大抑制には大いに効果があることは言うまでもありません。

・日本人が持つ免疫システムの固有性

 そもそも日本人のコロナ耐性が高いというような考え方です。生活様式や文化の中で免疫系が鍛えられるというような可能性もありますが、国民全体が持つというにはアジアとの関係性やそのような特性の獲得期間から考えて可能性は低いのではないでしょうか。ただ、数年前の新型インフルエンザの時に、懸念されたような状況にならなかったことから、特有の何かが存在する可能性も残ります。

・BCG接種率の高さ

 すでに一部の国でその可能性について試験が始まっています。BCGの免疫系トレーニング効果はいくつかの発表があり、新型コロナの感染状況とBCG接種率、使用株の相関も報告されており、可能性はあると考えられます。ただ、年代別の重症化率等に規則性が乏しいのが気になります。BCGの効果は時間とともに減衰すると言われていることから、であれば重症化率は年齢と一定(滑らかな)の相関があると考えられます。しかし、実際にはそのようになっておらず、60代程度を境に大きく変わっています。これが、単に年齢によるものなのか、それとも、BCG接種率が極端に低い60代以上がということなのかは今の情報では判断できません。また、BCGの効果が経時的に減衰するというのはBCGそのものについてであり、免疫トレーニング効果については情報はありません。

・すでに昨年末から多くの人が感染している

 軽症で済むS型、重症化するL型があるという論文を元に、実は昨年末からS型が蔓延していて多くの人が免疫を獲得しているという考え方です。しかし、最近になって当該論文は修正され、重症化という言葉は消えて、感染しやすいとなっています。また、別の報告では、S型にかかってもその後L型に罹患するというものもあり、現時点ではここに理由を帰着するのは困難という意見も出てきています。

・花粉症等のトレーニング効果

 これは、完全に私見です。日本人は諸外国に比べると花粉症を代表としてアレルギー疾患を持っている人が多いと言われています。アレルギー疾患とは、別の言い方をすれば免疫疾患の一種と言えます。したがって、日ごろから免疫系が鍛えられているという考え方です。また、重症化の原因の一つであるサイトカインストームは免疫系の暴走とも言われていますが、アレルギー症状もその軽いものとも言えます。普段からそういう状況にあるので、対応ができている可能性です。

 

 GW以降、自粛の効果なのか季節の変化の効果なのか、幸いにして感染は落ち着いています。しかし、第2波以降の懸念は当然大きく、また、その間も波を繰り返すと予想されます。そして、予防も治療もまだこれという方法は得られていません。そのため、国内でのワクチンや治療薬の治験が思うようにできない可能性もあります。

 重要なことは、まだまだ安心できないことを忘れないことです。