行動を起こす、何かにトライするといった時には、感情的ハードルを越えることが必要であり、そのドライビングフォースの代表がモチベーションです。しかし、人は感情の生き物であり、意思決定や行動は感情の影響を多分に受けます。そのため、理屈だけでは思うような結果を得ることができないという側面を持っています。ただし、全てが論理的に整理できないというわけではありません。
今回はそんなモチベーションを上げるということについて、論理的説明を試みた理論について書いてみたいと思います。
モチベーションの理論的説明にはいくつかのものがありますが、その中でも最も有名なものは「期待理論」と呼べれているものです。最初に期待理論について言及したのはビクター・H・ブルームで、ブルームの期待理論といった言い方をされることもあります。そして、この理論をベースとしてさらに発展させたのが、レイマン・ポーターとエドワード・ローラー三世であり、ポーターの期待理論とも呼ばれます。
まず、ブルームはモチベーションの形成プロセスを数式によって説明しようとしたところに大きな特徴があります。すなわち、モチベーションの構成要素とその関係性について整理しようとしました。
彼は期待理論の著書の中で
「がんばればどれだけのことが成し遂げられ(期待)、
それが成し遂げられたらいったいさらになにがもたらされ(用具性)、
もたらされたものそれぞれにどれだけの値打ちがあると予想されるか(誘意性)、
についての知覚、信念や態度という心理的過程がモティベーションを左右している。」
ビクター・H・ブルーム『仕事とモティベーション』より
と記述しています。
そして、これらの要素を用いて以下の関係式によってモチベーションを定義することを試みています。
モチベーション=期待×誘意性
すなわち、努力や行動によってもたらせる結果(期待)とその結果の価値(誘意性)によってモチベーションが定義されるということになります。要するに、どれだけ努力が報われるかということによって決まるという考え方です。
これに対して、ポーターらはより複雑な関係の可視化を試みています。彼らの考え方によれば、基本はブルームの期待理論と同様に期待と誘意性でモチベーションが決まるとしつつ、その結果の満足度によって次の行動が影響を受けるとしています。彼らの図を引用すると、
久恒啓一図解WEB 人的資源管理06年度講義配付資料より
と整理されています。
そして、これらに付帯的に作用するものとして、
- 達成可能と感じられる明確な目標の設定
- 可能であるという仮説の存在
があります。
また、これらの理論の難しい点として、モチベーションとは内的プロセスであり、冒頭述べたように感情に左右される点があるということ、すなわち、個人的側面が大きいということが挙げられます。すなわち、一様に整理して、考えることは困難な面もあるということです。
しかし、これらの理論はその中でも共通的に考えることができる部分が存在することを示しています。何が得られるのか、それは(本人にとって)どれほどの価値があるのかということはモチベーションの根本であることには間違いありません。ただ、それらが個人によって異なるというだけです。
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