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交渉のコツ・ポイント(注意点、落とし穴)

 交渉においては、様々な注意すべき落とし穴があります。例えば、すでに別項で述べているパイの大きさもその一つです。多くの場合交渉とはパイの取り合いであり、かつ、その取り合うパイは一定の大きさで変化しないという思い込みです。この他にも、交渉において注意すべきこと、落とし穴はたくさんあります。

 今回は、それらについて書いてみたいと思います。

  まず注意しなければならないことは、3つのバイアスによる影響です。一つ目のバイアスは、「認知バイアス」であり、言い換えると「思い込み」、「先入観」です。相手はこのように考えているはず、こうでなければならないなど、実際には何の根拠もない想像や推測でしかないことをあたかも事実と思い込んでしまい、それに思考が影響される状態です。このような状態に陥ると、当然のことながら判断を誤る可能性が極めて高くなります。従って、交渉の判断においては、事実(Fact)と想像とを明確に切り分けること、そして、客観的事実、確定事実を基本として判断を行わなければなりません。

 

 二つ目のバイアスは、「心理的バイアス」です。これは、こうなって欲しいという希望のように、思い、心理によって判断が影響される状態です。心理的バイアスは、無理だとは薄々は感じている、無謀なことだとは薄々は感じているにもかかわらず、そうなって欲しいという心理的バイアスによって、駄目だと分かっていてもトライしてしまうという状況を引き起こします。また、本当はそこまで必要ないと分かっていても、振り上げたこぶしの落としどころが見つからず、本心とは裏腹にふるまってしまうような状態です。従って、ここでも希望は希望として切り分けて、客観的な視点での判断を組み入れることが重要となります。

 

 三つ目のバイアスは、「思考的バイアス」です。これは、初期の段階では一見理屈が通っているような論理を展開してしまうと、その後の新しい事実を無視してその論理展開を押し通してしまう状態です。言うなれば、頭の中でこうと決めつけてしまって、それ以外の思考を受け入れられない思考状態、自分自身の思考によってアンカリングされてしまっている状態です。このような状態になると、冷静な判断はできなくなり、間違った結論にしがみついてしまいます。

 

 この思考的バイアスと類似のものとして、「エスカレーション」と呼ばれるものがあります。いったん決めた方針を変えることができず、駄目だ、おかしいと気が付いてもそのまま進んでしまう状態です。例えば、博打で負けが込んでいても、ここまで負けが続いているから次は勝てるはずだという思考、ここまでつぎ込んだのだからもう引けないという行動のエスカレーションが例として挙げられます。

 

 最後の例は、「フレーミング」と呼ばれるものです。これは、交渉の中で出てくる情報によって、条件の限界値などの枠組みが固定化されてしまう状態です。実際には、そのような固定化された枠組みは無い、または、もっと広いにも関わらず、狭い視点で思考してしまいます。例えば、冒頭で述べた交渉のパイの大きさはもっと大きい、他にもパイはあるのに、実際よりも小さなパイに固執して判断してしまうなどです。

 

 人の思考は、どうしても様々な情報やバイアスの影響を受けてしまいます。だからこそ、それらの存在を認識して客観的に判断することが求められます。

 これら以外にもまだまだ交渉の注意点や落とし穴はありますが、それらはまた機会があれば書いてみたいと思います。

 

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