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日本の国民力(新型コロナの自粛の根源)

 新型コロナでは、緊急事態宣言も出されましたが、あくまでも「お願いベース」ということでした。にもかかわらず、ほとんどの国民はその要請に応えて、見事に効果を生み出しました。諸外国では、罰則も含めた強い措置が必要でしたので、世界的に見ても不思議さと称賛(さすが日本)がありました。

 

 では、なぜこのようなことが可能だったのでしょうか。昨今は個人の権利が声高に言われるようになり、その流れからすれば日本も諸外国と同様のようにも思えました。しかし、現実は前述の通り全く違いました。色々な要因が考えられるかと思いますが、一言で言うなら「国民力」の高さであると言えるでしょう。文化、国民性という表現もされます。

 

 確かに、日本人は「右に倣え」で個性がないとか言われることはあります。そういった面も否定はできません。しかし、今回の件で言えば、右に倣えだけではなく、他人への思いやり、個人ではなく社会的視点という面が強いと言えます。

 

 江戸時代、日本は江戸の人口が100万人レベルであったと言われています。同時代、世界の中心であり大都市とされたロンドンは70万人、パリは50万人は程度ですから、格段の違いです。しかし、技術レベル等を見れば、日本は大きく遅れていました。にもかかわらず、この人口を抱えた都市を成立させていたのです。もちろん、幕府の絶対的権力というのはあったでしょう。しかし、それだけでは社会は成立しません。

 

 やはり、ここにあったのが前述の国民力として、思いやりや社会的視点だと言えます。あの時代、個人が権利を主張し、自分のことだけを考えていたら社会はすぐに崩壊したでしょう。それぞれが社会における自らの役割を認識して、社会を維持するという役割を担ったからこそ実現できたことです。

 

 それが、連綿と続く日本の国民力、一種の文化として今日に根付いているということです。だからこそ、お願いベースで成立できたのです。しかし、残念ながら欧米からの個人主義流入と定着で、それが弱まっているのも事実です。例えば、保障が無ければ休業できないという考え方ですが、確かに当事者からすればそう言いたくなるでしょう。しかし、全ては社会と言う基盤があってこそ成立しているものでもあります。その商売は社会基盤というリソースの上に成り立っているということを忘れてはいけないということです。

 

 また、このような国民力を基盤としたモノづくりをしてきたからこそ、日本は経済大国になれたとも言えます。お客様のことを第1に考えるという商売の基本をしっかり守ってきたということです。ただ、昨今は新興企業を中心に技術第1主義、利益第1主義の欧米型が台頭してきているのは懸念事項です。逆に、欧米企業の一部は従来の日本的な事業運営を取り入れようとしています。

 

 しかし、残念ながらその後の緊急事態宣言解除以降、急激に感染が拡大しています。たまったストレスの発散ということもあったかもしれません。しかし、その原因として自分ぐらいは、ダメとは言われてないし、といった前述の国民力とは異なる自分視点が表に出た結果とも言えます。感染症を考えた時、落ち着けば元に戻していけばよいのですが、増える兆候が見えたら速やかに抑え込みかかる必要があります。そんな中で、夜の店、会食等、本当にその時に必要なのかということを考えなければなりません。店側も、赤字を補填したいということもあるでしょうが、感染が再拡大すれば結局は自分たちの首を絞めることを認識しなければなりません。

 

 新たな考え方は取り入れるべきことではありますが、守るべきものもあるということは忘れてはいけません。自分たちのアイデンティティーを否定していないか。