新規事業の創出や大きな開発テーマになるとチームが組まれてプロジェクト体制でスタートすることが多いと思います。しかし、往々にしてプロジェクトが停滞し、終盤に差し掛かるといわゆるデスマーチが流れ始めて突貫工事がスタートするということも珍しくありません。また、最後は形式だけを整えることに終始する、何となくフェードアウトで立ち消えということも少なくありません。今回は、そのような状況に陥らないためのプロジェクトマネジメントのポイントの中で、あまり注目されていない抜けている部分を中心に書いてみたいと思います。
プロジェクトがスタートするときには、通常は実行計画が立てられます。この計画自体に問題があることも少なくありません。
本来のプロジェクト計画では、
・プロジェクトの責任範囲であるスコープ
・要求されるアウトプット
・使えるリソース
・期限
・ステージゲート
・リスク
などなど、様々な要因を検討したうえで最終的に決まるものです。しかし、多くのプロジェクトではこれらの重要要素の検討はほとんど行われず、何となく決められた期限だけを元に計画策定が行われています。これでは、スコープが漏れ、リソースが足りなくなって、採取的にデスマーチが流れることになります。
プロジェクトに限らず、計画策定においては必ず、例えば上記に上げたような計画決定要素が十分に洗い出して検討されなければなりません。
実は、プロジェクトにおける計画では実行計画と共にもう一つ重要な計画というか、取り決めが必要です。それは、「コミュニケーション計画」、すなわち、報告などを含めた情報共有の計画、ルール決めです。ほとんどのプロジェクトマネジメントにおいて、このコミュニケーション計画、ルールが定められておらず、情報共有の停滞が起こっています。
プロジェクトでは複数の人が分担して関わりますから、どうしても情報共有の停滞が起こります。誰から誰に、どういったタイミングで、どのような方法で情報共有、すなわち、コミュニケーションを取るのかということを予め取り決めておくことがプロジェクトをスムーズに進める二つ目のポイントになります。
三つ目のポイントは、実行担当と共にフォロー担当を決めるということです。プロジェクトでは様々な人がそれぞれの役割で参加します。そのため、それぞれの役割が明確に決まる分、個別的に進んでいって、連絡会議で初めて状況を知るということが多々起こります。本来プロジェクト運営においては、必要、適切な人材が集まって、それらの人達が協力し合ってシナジー効果を生み出すことを期待してチーム編成がおこなわれます。しかし、これではプロジェクト化する意味、効果がほとんどない状態であると言えます。
また、エースを集めることが多いですが、場合によっては若手や中堅という言った成長途上の人員も配置されます。このような状況の中では、どこかに停滞が起こりプロジェクト全体のボトルネックになることがあります。しかし、前述のように役割分担が明確なため抱え込んでしまうということが起こります。
従って、プロジェクトを円滑に進めていき、ボトルネックの発生を抑制するためには、実行担当と共に、特に若手や中堅、他の仕事を抱えているような人を中心にフォロー担当を付けるなど、相互協力体制基盤を構築することが必要です。
四つ目のポイントは、プロジェクト中や終了時に、結果だけを共有するのではなく、課題や失敗なども同時に共有し、振り返ることが重要です。一般的には、どうしても上手くいったかどうかだけの議論や記録に終始することになりますが、それだけではプロセスが情報資産として残りません。課題や失敗は解決するだけでなく、それら自体を共有し、一緒に振り返ることが重要です。
五つ目は、役割、責任、そして、その役割やワークの目的、結果だけでなく、個人に対するものも含めた期待、そして、重要度(ランク)を明確にすることです。役割や責任は多くのプロジェクトで規定されているかと思いますが、目的が不明確なままになっているケースが少なくありません。これでは、単なるやらされ仕事になってしまいます。アサインした役割はプロジェクトの中でどのような意味を持っており、どういう居続けのものなのかを理解するだけでも、自分のプロジェクトへの貢献が具体的にイメージできるようになります。また、個人に対する期待を明確にすることで成長を促すことができます。例えば、今回のプロジェクト通じてチームで仕事をすることを覚えて欲しいなどを伝えることで、業務の中での観点が変わります。また、重要度(ランク)を決めることはプロジェクトを円滑に進めるためには必須です。どうしても仕事のコンフリクトが起こりますので、そのような場合には停滞することなく全体の整合を取るためには明確なランク付けが必要不可欠です。
この他にも、プロジェクト運営のポイントはたくさんありますが、それらはまた機会があれば書きたいと思います。
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