組織の中では、普段はほとんど役に立っていない、存在意義が疑われると感じられる部門や人がいると感じることがあります。確かに、窓際族という言葉が過去にあったように、本当に組織に不要というケースも存在します。しかし、一見そのように見えたり、感じられたりしても、本当は必要不可欠であることが少なくありせん。
今回はそんな組織の不思議について書いてみたいと思います。
少し前の民主党政権時代に蓮舫氏が言って流行語にもなった「仕分け」によって、多くの国や自治体の機関が縮小されたり、廃止されたりしました。確かに、本当に役所の論理で不要なものが残っていたのが掃除されたということもたくさんありました。しかし、一方で縮小しすぎて、廃止したために弊害が出たケースも少なくありません。
仕分けに限らず、一見不要、多すぎると感じてしないがちなものに、緊急時、有事に対応する組織があります。例えば、新型コロナ対応で問題となった保健所も多くの自治体で縮小され続けていました。その他の役所の支所や職員数、病院もそうです。確かに何もなければ、多すぎるのではないか、無駄ではないかと感じてしまうこともあるでしょう。しかし、いざとなった時に急に増やすことができないのも組織です。そのため、そのいざとなった時に困るのです。
こんな状況を表す言葉に、
「百年兵を養うはこの一日のためなり」
という言葉があります。
軍隊、日本であれば自衛隊こそ有事のための組織の最たるものと言えるでしょう。戦争にならなければ、普段は訓練ばかりして、税金の無駄だとよく言われます。特に、この平和な時代に自衛隊が必要なのかという議論は様々な場面で見られます。しかし、本当にそうでしょうか。いざとなったらということはことはもちろん、間違いなく存在することで抑止力になっています。
また、自衛隊は災害派遣でその存在に大きな価値があります。東日本大震災、大雨、台風、様々な場面で彼らは人知れず活躍しています。そして、被災者の人達はそれに大いに助けられています。それが可能なのは、日ごろの訓練のたまものであり、存在しているからこそです。では、軍隊ではなく災害用の組織にすればよいのではないかという意見もあります。しかし、より厳しい軍隊としての訓練をしているからこそ災害派遣で活躍できるということも忘れてはなりません。そして、軍隊は災害派遣で活躍できますが、災害対策組織は軍隊にはなりません。(だからと言って、決して軍隊にすべて賛成というわけではないということは付け加えておきます)
企業においても、自衛消防隊などを組織している企業も少なくありません。彼らは普段は日常業務についていることもあるでしょうし、専属ということもあるでしょう。しかし、いざとなったら先頭に立って活躍してくれます。
組織というものは、複雑で目先のこと、部分だけを見ていては正しい判断ができないものです。組織や人を考えるとき、もう一度、その価値、活躍の場、必要性を未来視点で見つめ直すことが重要です。