現代のような複雑な社会において事業活動を行っていくためには、ち密な戦略策定は必要不可欠であり、経営戦略、事業戦略、技術戦略など様々な戦略が立てられています。そのため、戦略策定のためのツールとして、PEST、3C、5-forceなど様々なものが開発されています。しかし、要因は複雑であり、単純にそれらの戦略ツールに則って考えるだけでは不十分であることがほとんどです。そのため、多くの企業で戦略策定と言っても、名ばかりで絵に描いた餅になっていることもしばしばです。
そこで、今回は戦略策定に共通する基本となる考え方について書いてみたいと思います。
一言で表現するならば、そもそも戦略とは何でしょうか。戦略とよく似た言葉には、戦術という言葉もあります。これらは元々は戦争の場面で使われるものであり、どちらも戦い方を規定するものという点では共通しているのですが、戦術の方がより具体的な戦い方を規定するものであるとされています。例えば、ある国と戦争とおこすかどうかが戦略であり、どんな攻め方をするかが戦術であると言えます。ただし、これらに厳密は線引きはなく、場合によっては後者も戦略と呼ぶこともあります。
では、最初の質問に戻って戦略とは、問われた時の答えは、
「戦略とは何をするかを決めること」
であり、別の言い方をすれば、
「戦略とは何をしないかを決めること」
となります。
または、「進む方向を決めること」であるとも言われます。すなわち、基本方針という言い方もできます。
このように考えると、多くのケースで計画が戦略と呼ばれていることが分かります。計画とは、何をするかが決まっている状態で、どうそれを実行するかを規定するもの、言うなれば戦術とも呼べるものです。したがって、戦略無くして計画を立てているということになります。
では、戦略を考えるときに何を起点として考えればよいでしょうか。
企業において、もっとも身近にある戦略の起点は「理念」です。理念とは、その会社が最も大事にしていることであり、実現を目指すものですから、まさに戦略、それも最も基本となる戦略であると言えます。したがって、戦略を考えるときにはまず企業理念を再確認するというのがスタートになります。
ちなみに、有名企業の理念を紹介すると、
トヨタ自動車(HPより)
- 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
- 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
- クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
- 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
- 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
- グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
- 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
ホンダ(HPより)
人間尊重
自立、平等、信頼
三つの喜び
買う喜び、売る喜び、創る喜び
といったものがあります。
その他にも実はアップルには明確な理念(ミッション)は定義されていません。ただ、「共通のビジョンを持つことこそが最優先である」という言葉はジョブズによって残されており、また彼は創業時には、「テクノロジーを介して何百万人もの人の生活を変える」というビジョンを掲げていました。
このように、企業によって様々な戦略の基盤となる理念はあるのですが、なかなかここから戦略を考えるというのは容易ではありません。そこで、そんな時に考えていただきたいのが、
「我が社は何屋か」
ということです。言い方を変えると、いったい自分たちは何を売っているのか、顧客、社会に対して、究極的に何を提供しているのかということです。
例えば、ユニクロに代表される服屋さんは文字通りの服屋なのでしょうか。彼らの思いは服を提供するということはあくまでも手段であり、それによって満足や喜びを提供しているのです。それこそが戦略の基盤となるものです。何をすべきかということを考えるときに、果たして購入者や社会に対して満足や喜びを与えられるか、逆に言えば、喜びや満足を与えられるものを選択することこそが戦略の起点となります。たとえそれ服がではなかったとしてもです。
戦略策定は容易なものではなく、かつ、企業の未来を決める極めて重要なものです。道に迷った時には、いったい自分たちは何屋なんだろうと考えることでヒントが得られるはずです。
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