ARCSモデルとは、ジョン・ケラーが1983年に提唱した学習意欲に関する効果モデルです。学習意欲の要因について4つの要素によって整理したものであり、如何にして動機づけをしてモチベーションを高めるかといったことに関係づく代表的理論体系の一つです。
今回は、このARCSモデルについて書いてみたいと思います。
ARCSモデルの名前は、学習意欲、動機づけの基盤となる4要素の頭文字得とったものであり、
A:注意(Attention)
R:関連性(
C:自信(Confidence)
S:満足感(Satisfaction)
から名づけられています。
それぞれを見ていくと、
A:注意(Attention)
学習を促すためには、おもしろそう、楽しそう、ためになりそうなど学習者の興味・関心に働きかけることで注意を向けさせることでスタートを切らせるトリガーを与えることが必要であるということです。例えば、新しさや珍しさなどはもちろん、不思議さや驚きによって探究心を刺激することも効果です。通常はこれらを整理して、注意喚起の4要素として
・知覚的喚起 - 学習者の興味を引き出すために何ができるか?
・探求心の喚起 - 「学びたい」という気持ちを刺激するために何ができるか?
・変化性 - どうすれば学習者の興味・関心を維持できるか?
といったことが挙げられています。
また、注意の持続には、マンネリを避け、授業の要素を変化させることが有効です。
R:関連性(
何を学ぶのかを理解することで、学習と言う行動と自己との関連性を強め、これによって意欲を生む、さらに、やりがいや何が得られるのかといった意義を理解することでより直接的に学習との関連性が高まり意欲への繋がります。言い換えれば、これらの理解、認識ができ中れば、「何のためにこんな勉強をするのか」という戸惑いを生むことになり、学習意欲を阻害する要因となります。
関連性に関わる要素としては、
・親しみやすさ - 学習内容と学習者の経験を結びつけるためにはどうすればよいか?
・目的指向性 - 学習内容と学習者の目的を結びつけるためにはどうすればよいか?
・動機との一致 - 学習者にやりがいを実感してもらうベストな方法・時期とは?
といったことを検討することが重要であるとされています。
また、何が得られるのかといった学習の将来的価値だけでなく、プロセスを楽しむという意義や課題の親しみやすさも関連性の一側面だとされています。
C:自信(Confidence)
その大小は関係なく成功の体験を重ねたり、「やればできる」という感覚を経験をすることで自信が付き、さらに高みを目指そうとする意欲へと繋がります。ここで重要なことは、ゴールを明確にすることはもちろん、ただ言われたとおりにするのではなく試行錯誤を重ね、自分なりの工夫をこらして成功するという学習の自己管理の側面を感じられることです。そうすることで、自信はさらに高まり、高い意欲へと生まれ変わります。
ポイントとなる要素は、
・学習欲求 - 学習者が「やればできそう」という期待感を抱くにはどうすべきか?
・成功の機会 - 成功体験を通して学習者が自分の能力に対する信頼を高めるメカニズムとは何か?
・コントロールの個人化 - 学習者が、成功体験が自分の努力と能力によるものだと認識するためには何をすべきか?
を考えることであるとされています。
S:満足感(Satisfaction)
学習を振り返り、努力が実を結び「やってよかった」と思えれば、次の学習意欲へつながる満足感が達成されます。例えば、学んだことが実際に役に立ったという経験や、周囲からの認知と賞賛などが重要だとされています。
ここで重要なことは
・内発的な強化 - 学習者の心に生まれた、学習に対する興味・関心を向上させるにはどうすべきか?
・外発的報酬 - 学習者の成果に対して、どのような称賛や報酬を提供すべきか?
・公平さ - 学習者が公平に評価されていると実感するためには何をすべきか?
があげられます。
意欲やモチベーションを高める場合には、とかくスタートをどうするかということに注目されがちですが、ARCSモデルからも分かる通りプロセスや学習後も重要です。そして、最終的には自己学習サイクルを構築することにつなげなければなりません。